ツーリングのレポートを一つ。
2年前の夏、日帰りで紀伊半島一周ソロツーリングに行った時のものです。

この夏、10日間の休暇の前半は家族サービスに専念し、後半に入った一日、愛車、スポーツスターを駆って、紀伊半島一周のツーリングに行きました。

5時少し前。
いつもの朝ツーのつもりで行き先を決めないまま出発し、走りながら「思い切って遠出を」と、高速道路に乗って伊勢志摩を目指しました。
真夏にもかかわらず肌寒く、ウェアが湿るほどの濃霧の新名神から、伊勢自動車道に入ったあたりで気が変わり、紀伊半島を回ることに決めました。
一度走ってみたかった、九鬼の美しいリアス式海岸の風景が、そして、どこまでも野放図なまでに明るい南紀の海が、頭に浮かびました。

紀勢自動車道の大内山終点から先は、R42で荷坂峠へ。
ここは、学生時代、当時の愛車HAWKⅡで何度か走った道です。
下りに入ってすぐ、このコースで始めての海が見えてきます。
バイクにしろ、車や列車の旅にしろ、最初に海が見えた瞬間というのは、やはり良いものです。
峠を下り切ったところ、紀伊長島の道の駅では、念願の(?)マンボウの串焼を頬張りました。
プリプリした食感に程よい塩かげんは、たいへんに美味で、行列ができる人気メニューです。
10年ほど前、家族で来た時には、ようやく買った1本を子供たちに奪われ、自分の口には一切れしか入らず、急いで並び直すもすでに売り切れ。
それ以来、いい大人がずっと根に持ち(?)ようやく…の一品でした。

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海山町から尾鷲にかけては、学生時代に合宿やツーリングで何度か来たことがあり、また、20数年前、ちょうど今の私の年代の義父が、単身赴任で生活していたところです。
結婚前に義父に連れられて行った居酒屋を探しあてて、記念撮影。
残念ながら店主はすでに亡くなり、代替わりしていました。

尾鷲の街を出外れたあたりでR311に逸れ、このツーリングの目的地のひとつ、九鬼へ。
漁師にして九鬼水軍の末裔で、気性の荒い風土…といった勝手なイメージとは裏腹に、行き合う土地の人達は、よそ者の自分にも愛想よく挨拶を返してくれます。
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ルートの大半は交通量の少ない2車線の快走路で、リアス式海岸のキレイな眺めとワインディングの走りを、存分に楽しめます。
ルート上には漁村が点在し、そうした所では道幅も狭く、車一台通るのがやっと…といったところもありますが、鄙びた漁師町の風情もまたいいものです。
入り江の漁村や白砂の海水浴場をいくつか過ぎて、熊野でR42に戻ってすぐ、トンネルの手前が、観光名所鬼ヶ城への入口です。
遠い昔、小学生の頃、祖母に連れられてきたのを思い出しました。
今は、遊歩道脇の土産物屋のほとんどが店を閉じ、寂れてしまっています。
遊歩道も、崩落とかで途中までしか行けず…
R42に戻り、トンネルを抜けると熊野市街です。
熊野の浜では、明後日が花火大会ということで、海岸まで重機を持ち込んで、準備に大わらわでした。
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この花火大会は関西で屈指の大規模なもので、特に、海上低く半球形に広がる海上花火の美しさは特筆ものだそうです。
話に聞くだけで、まだ見たことはないのですが。
一度、私たち家族+義父母、義弟で来ようとしたことはあるのですが、紀勢線とR42以外に道がないところに、数万人の人出ということで、あまりの混雑に熊野までたどり着けなかった…といったこともありました。
海岸で写真を撮っていると、熟年の夫婦らしき2台のアメリカンが通過。
カメラを片手にピースサインを送ると、二人揃ってサインを返してくれました。

ここから先、七里御浜は、九鬼のリアス式海岸とは打ってかわって、どこまでも真っ直ぐな海岸線が続きます。
獅子岩から道の駅パーク七里御浜、道の駅紀宝町ウミガメ公園と、美しい海岸線を見ながらR42を南下し、新宮へ。
市街に近づくにつれて車が増え、街の入り口、熊野川を渡る橋の手前は大渋滞でした。
ふと道路脇の掲示板を見ると、この日は花火大会とのこと。
この渋滞も、さっきから目につく法被姿の人たちも、このためかと納得でした。
このあたり、那智の滝や世界遺産の熊野古道、瀞峡など、内陸部にも見処はたくさんありますが、目的は紀伊半島一周。
今日のところは先を急ぎます。
新宮をすぎると、すぐに那智勝浦です。
ここの休暇村は温泉がすばらしいとのこと、後々のために、休暇村の前まで下見に行きました。
ツーリングに行って「良かった」と思えた所は、後日、車で妻を連れていくことにしています。
実際、2ヶ月ほど後の結婚記念日には、ここに泊まりにくることになりました。
休暇村から程近い勝浦の市街に入って、勝浦漁港に立ち寄りました。
昼時の静かな漁港と、ベタな観光地。
こういう雰囲気も、時にはいいもんです。

NACHIKATSUURA (683X512)
勝浦を出て串本に向かうこのあたりから、また、海岸の様子がかわってきます。
海面スレスレに、海面と同じ高さでまっ平らな岩場が続く、このあたり…南紀の独特の景観です。
しばらく走ると、前方に何やら奇怪な風景が見えてきます。
海岸から沖に向かって…沖にうかぶ大島に向かって、大きな岩が点々と並ぶ景観は、遠くから見ても異様なものです。
これが有名な観光名所、橋杭岩(はしくいわ)とのこと、干潮時には岩づたいにかなり沖のほうまで歩くこともでき、一見の価値ありです。
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そしていよいよ、この日のメイン、本州最南端、潮岬です。
太平洋をバックに見晴らしのいい草原の道を走り、展望タワー脇に駐車。
さっきまで前後して走ってきた数台のグループと、軽く挨拶を交わして、徒歩で岬の先端へ。
開放的な広々とした草原の先の展望台が、本州最南端です。
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ここから望む突端の「クレ崎」は、まさに「黒潮洗う」という形容がぴったりの、荒々しい岩場です。
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ここで、最南端の記念にと、GPSロガーの画面を撮影しておきました。
(この時のログは、パソコンを買い換えた時、バックアップ作業の手違いで、消えてしまいました。残念。。。)
GPS (683x512)
展望タワーに戻り、タワー脇のレストランで、遅めの昼食…まぐろ寿司を食べながら、妻にメールで連絡すると、潮岬と聞いて驚きながらも、せっかくだからと泊りを勧めてくれます。
残念ながら、軽く朝ツーのつもりで出発したため、着替えはおろか、お金も満足に持っておらず、どうしようもありませんでした。
潮岬から少し走って、潮岬灯台へ。
入り口付近の有料駐車場はパスして、灯台の前までバイクを乗付け、灯台に上りました。

潮岬を出て後半、紀伊半島の西岸にはいると、しばらくは人家も少なく、午後遅い時間ということもあって、侘しい雰囲気です。
ところが、小休止に立ち寄ったすさみの道の駅イノブータンランドでは、海水浴帰りの若者のグループが休憩中。
侘しいどころか…やたらに露出の多い女の子たちの格好に、目のやり場に困ってしまいました。
出発直前、田辺方面から古いアメリカンが入って来ました。
ハーレーの旧車?左手シフトのかなり古そうなバイクです。
潮岬までの所要時間を聞かれ、「40~50分ぐらいか」と答えたところ、少し考えこんでいます。
帰る時間を気にしている様子でした。
出発して少し走ったあたりで、潮岬はあきらめたのか、そのバイクが追いついてきて、しばらく前後しながら走りました。

ところで…
潮岬の少し手前あたりからガソリン警告灯が点灯し出していたのですが、このバイクの警告灯は残り7~8リットルで点くので、まだ100キロ以上は走れるはずと、気にしながらもそのまま走っていました。
ところが串本を過ぎた後は、ガソリンスタンドどころか、人里の気配すらなく、警告灯が点きだしてから既に50キロ以上。
ガソリン残量を気にしながらの走行になりました。
幸い、周参見の外れでようやくガソリンスタンドを見つけ、無事給油することができました。
中年夫婦とおばあちゃんとでやっている小さなスタンドですが、これが結構流行っています。
地元の馴染みらしい軽トラの後にに続いて入ると、おばあちゃんがやってきます。
(うぁ…タンクにガソリンこぼさないでね…)
不安を他所に、結構シッカリした慣れた手つきで給油してくれました。
「いやぁ、ガソリンギリギリで。串本からこっち、ガソリンスタンドがなくて。」
「そうだよぉ。ないない。なーんにもないだろ。」
何気ない会話でしたが、妙に和むものがありました。

次に休憩に寄った志原海岸の道の駅は、海水浴客で賑わい、海岸にはテントがいっぱいでした。
shihara
この後、雑誌のツーリング記事でも度々紹介される、白浜の円月島などにも行きたかったのですが、思ったよりも遅くなったこともあり、白浜はまたの機会にと、阪和自動車道で帰路につきました。
阪和道の和歌山までは、トンネルがやたらに多く、トンネル内は異常に気温・湿度が高く、たいへんに不快。
この時ばかりは、窓を閉め、エアコンを効かせて走る4輪が、うらやましいやら妬ましいやら…
こちらはと言えば、ひとつトンネルが近づくたびに「またか」とテンションが下がり、疲れもたまっており、ついつい居眠りが出始めます。
ようやく紀ノ川SAにたどり着いて、冷たい缶コーヒーで生き返った思いでした。
ところがこの後が大渋滞。
すり抜けすり抜け…のつもりが、なんとパトカーの後ろに付けてしまい、それ以上前に行くわけにもいかず…
前後して走っていたローライダー氏と一緒に、泉佐野JCTまでノロノロ渋滞のお付き合いでした。
そんなわけで、予定よりもずいぶん遅く、帰着はとっぷりと日も暮れた8時近くになってしまいました。

15時間650キロに及ぶ、この夏の、そして、バイクライフのすばらしい思い出になる、ロング、ソロツーリングでした。



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