まだ6時前。
携帯のアラームよりも早く目が覚めてしまった。
この季節、この時間はまだ真っ暗だが、早朝の暗さ自体は、嫌いではない。
暖かい布団から這い出して・・・ウェアは昨日から用意してある。
萎えそうな気持ちを励まして、ブーツの紐を結び、ヘルメットを抱えて玄関ドアを開ける。
靴音をたてないように気を配りながら螺旋階段を降りる頃には、もう覚悟は決まっている。

重い車体を通りまで引き出して、エンジンキーを回す。
この寒さ、弱ったバッテリにとっては、かなり厳しいだろう。
さて。
無事に始動してくれよな。
キュン、キュルン、キュッドッドッドッ
3度目の圧縮をかろうじてクリアし、「ダメか?」と諦めかけたところで、エンジンが目覚めた。
苦笑い。
薄暗く、静まり返った早朝の住宅街に排気音が響き渡る。
もう少し暖機したいところだが、そうもいかない。
オイルが行き渡り、メカノイズが落ち着くまでの数瞬だけを待って、ギアを入れ、クラッチを繋ぐ。
本当は、エンジンにあまり負担を掛けたくはないのだが、仕方がない。
できるだけ静かに、回転は上げないように。
堤防の上、県道に出たところで、少しスロットルを開け、ようやく安定した回転に落ち着かせる。

白みはじめる空の下、高速道路を流す。
ツーリングの一日の中で、いちばん気分のいい時間帯かもしれない。
高速道路が北東から東に向きをかえる頃、正面の稜線に太陽が顔を出す。
しかし、気温はそう簡単には上がってはくれず、相変わらず冷たい空気が身体中に突き刺さる。
頬や指先、脛など、風に直接曝されるところ、比較的ガードが緩いところが、痛いほどだ。
次のサービスエリアまであと2キロ。
この辺りまでくると、日常の生活圏を離れて、遠くまできたという感覚になる。
そろそろ朝飯にするか。


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